濡羽色(ぬればいろ)
2024/10/04
カラスの濡羽色(ぬればいろ)というのは、遥か万葉の時代から、女性の黒髪を形容する言葉として使われてきました。
艶やかで、光のあたり具合によっては、緑にも紫にも見える美しさを表現したものです。
平安時代の女性にとっても、濡れ羽色に光る、まっすぐな黒髪は、美人の条件でした。
多少の違いはあっても、基本的に誰もが黒い髪を持つ日本人にとっては、その当たり前の黒を、いかに美しく見せるか?という事が大事に思えたことでしょう。
ところがヨーロッパにおいては、『黒』に対しての意識が、かなり異なります。
それは、特に『黒猫』に対して顕著に表れます。
黒猫は、魔女が化けたものとして扱われ、「黒猫は不吉」という都市伝説は、今も根強く残っています。
これには、宗教的な思惑がからんでいるという説もあります。
キリスト教圏を拡大したい教会にとって、それ以外の宗教は排除したいものでした。
それが15世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパで盛んになった魔女狩りにつながります。
紀元前から、エジプトで信仰されていた猫の頭を持つ女神、バステトは、ギリシャに伝わり女神アルテミスと融合されます。
アルテミスは、ローマ神話におけるディアーナに相当します。
バステトの流れから、ディアーナ信仰においても、猫は神聖な生き物とされていました。
白は天使、黒は悪魔といった対概念から、特に黒い猫が『邪悪なチカラを宿している』あるいは『魔女の化身』とされ、激しい迫害を受けました。
一方、日本においては、黒猫は、夜目が利くことから、魔除けや幸運のシンボルと捉えられてきました。
その最たるものが、黒い招き猫。
日本最古の招き猫は、京都の壇王法輪寺にあります。
京都では、「だんのうさん」と呼ばれて親しまれているこちらで、『主夜神尊招福猫』としてつくられたものです。
不思議な神通力を持つとされています。
日本では、暗闇には恐ろしさを感じてはいるものの、「黒」そのものに嫌悪感はなかったと言えるのではないでしょうか?
喪に服する衣装が、黒になったのも近代になってからですし・・・・。
喪服の変遷については、コチラ
最近では、都会でカラスがゴミを散らかすなど、なにかと嫌われものになっていますね。
これも、「黒猫は不吉」といった西洋の思想が入ってきたのも、嫌われるようになった要因のひとつと言われます。
濡羽色の美しさを愛でたころの気持ちの余裕は、もう望めないのかも?
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