苅安色(かりやすいろ)
2024/03/06
苅安(かりやす)というのは、イネ科の植物で、古くから、黄色に染める材料として用いられました。
古代の人々にとって、日々、目に見えて成長する『植物』には、そこに宿る精霊のチカラがあると信じていたのではないでしょうか?
その植物から採れる、自然の色で染めることで、霊のチカラを自分の身にまとうことができる、と考えたとしても不思議ではありません。
イネ科の植物で染めると、青みのつよい黄色に染まります。
なかでも、苅安は、その名の通り簡単に刈り取れる事と、都が置かれた奈良・京都に近い近江の国(滋賀県)でよく採れたことから黄色の染色材料の中心となりました。
飛鳥時代、推古天皇によって制定された『冠位十二階の制度』は、6色の濃淡を使った12色の色で、身分を表しました。
背景としては、ひとつには、家柄にこだわらずに有能な人材を登用するためということがありました。
そして、もう一つには、大陸からの外交使節を受け入れるための体裁を、整える必要があったのです。
相手の位に合わせた者が、応対しているということを、わかってもらうために『色』というのは、便利でした。
上位から、紫・青・赤・黄・白・黒といった色が用いられました。
大陸から伝わった、五行説に出てくる色(青、赤、黄、白、黒)の上に、古代中国でも高貴な色とされた紫を加えた6色です。
冠位制度は、時代を経て、その内容が改定されていきました。
新しく加わった色もありましたが、黄色が入っていたのは、最初だけだったのです。
持統天皇が、「百姓には黄色、奴には皁(くろ)を着せよ」という詔を出したことで、黄色が、身分の高い人の色になることはなくなりました。
江戸時代、黄色は庶民に人気の色でしたが、刈りやすく、安易に手に入ることで、誰もが手に取りやすい色、という意識が私たちのDNAに刻み込まれていたのかもしれないですね。
庶民の文化が花開いた江戸時代、黄八丈が大人気。
これも、八丈苅安(はちじょうかりやす)を使った黄色の染料でした。
歌舞伎で人気の役者が身につけたことで、そのコスプレを楽しみたい人たちに引っ張りだこの色となりました。
2019年、吉岡幸雄先生の工房で、染色体験をさせていただきました。
その折、『苅安染め』『茜染め』のどちらがいいですか?と聞かれて、茜染めを選んだ私は、次は是非、苅安染めを!とお願いしていましたが、叶わぬままとなってしまいました。
染色には、乾燥させた苅安を煮出して使いますが、その折、媒染剤に灰汁を使うと、やや、くすんだ青みの黄色に染め上がります。
これをミョウバンにすると、澄んだ黄色に染め上がります。
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