若紫(わかむらさき)
2023/11/10
若紫といえば、源氏物語が連想される人が多いのではないでしょうか?
光源氏に最も愛された、もう一人の主人公、紫の上のことですね。
源氏物語は、「紫のゆかりの物語」と呼ばれたほど、紫色をベースにした物語です。
紫色と縁(ゆかり)という二つの言葉は、源氏物語の中で初めて「紫のゆかり」と一緒に表現されました。
かの紫のゆかり尋ねとりたまひては
(あの藤壺とつながりのある人を尋ねあて)
・・・末摘花より
かの紫のゆかり尋ねとりたまへりしをり思い出づるに
(あの紫の上を尋ね当てた時を思い出せば)
・・・若菜(上)より
この時代の紫色といえば、紫草の根で染めたもの。
濃く染めあがった紙や布に、他のものを重ねておくと色が移ったことから、それを縁(ゆかり)と言い表したようです。
紫草(むらさきぐさ)は、白い可憐な花を咲かせます。
その根っこが、紫色の原料となるのです。
源氏物語を書いた紫式部に限らず、枕草子を書いた清少納言も、紫色を絶賛しています。
時代は、藤原氏の全盛期。
そりゃ、紫いろを絶賛するでしょう!という時代的な背景もあります。
ところが、平安時代には、この若紫という色は存在しなかったのです。
源氏物語でも、幼き日の紫の上との出会いの場面が書かれたのは『若紫』ですが、色としては表現されていません。
『若紫』という色名が出てきたのは、江戸時代。
染色技術が進み、紫草を使わない紫色が作り出せるようになってからのことです。
紫色を渇望する気持ちや、言葉の響きのよさから、流行したようです。
江戸時代から続く、源氏香の図柄にも『若紫』が登場します。
源氏香というのは、聞香(もんこう)を楽しむ組香(くみこう)のひとつ。
彩り香では、9月のおけいこで楽しんでいただいています。
若紫という色は、色名・実際の色・イメージが重なり、今日に続く人気の色となっています。
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