銀朱(ぎんしゅ)
2023/06/08
銀朱、と言うのは、真朱と一線を引くためにできた色名です。
真朱は、真実の朱色、ホンモノの朱色。
朱色の原料は、朱砂(しゅさ)。
中国の湖南省辰州で採られた朱砂(しゅさ)は、特に良質で「辰砂(しんしゃ)」と呼ばれました。
日本では、縄文時代から発掘されており、万葉集ではこの色が『まそほ』と呼ばれています。
赤土で作られた『赭(そほ)』という色より、純度が高いことから、ホンモノの朱色とされたようです。
朱砂は、天然の硫化水銀鉱物から取り出され、非常に高価なものでした。
そこで、硫黄(いおう)と水銀を使って、人工的につくられたのが硫化水銀、すなわち『銀朱』でした。
ひと昔前は、ハンコといえば朱肉とセット。(シャチハタは画期的でした!)
今は、スタンプみたいにインクをつけますが、昔は、紙粘土みたいな感じのものでした。
使った後は、ハンコの溝に詰まった朱肉を掃除しないと、印影がハッキリしなくなるので、印鑑ケースのブラシは必需品でした。
その朱肉は、和紙や白蝋、松脂などを練ったものに、銀朱で色を付けたものでした。
印鑑そのものは、仏教とともに伝来し、奈良時代には『官印』として使用されいたというのですから、かなり古くから私たちの生活に馴染んでいたのですね。
他には、お習字の時に、先生が
「ここのハネをこうして・・・」
と言いながら、朱色で直してもらったのを覚えている人もあるかも?
あの、朱墨の色が銀朱で作られていました。
銀朱には、歳月を経ても変色・変質しないという特徴があります。
加えて、原料の水銀には防腐作用もあります。
古墳時代の棺には、銀朱で内部を塗ったり、屍に直接朱色を塗ったものがあるのは
血の色であるこの色を塗ることで、生命の再生を祈ったとされています。
赤という色に対する人々の思いは、とても重くて尊い存在だったのでしょうね。
----------------------------------------------------------------------
彩り香
〒600-8415
京都府京都市下京区因幡堂町651
電話番号 : 050-1558-3278
----------------------------------------------------------------------