黒橡(くろつるばみ)
2024/11/22
橡(つるばみ)とは、クヌギの古名とされます。
私たちが『どんぐり』と呼んでいる、その実やクヌギの樹皮を使って染めたものが、橡色(つるばみいろ)です。
橡の実を染める際に使う媒染液で、違った色が作り出せます。
鉄媒染すれば、濃い茶色に。
もっと黒く染めたものは『黒橡(くろつるばみ)』と呼ばれ、平安時代には、貴族の衣服や法衣にも使われました。
深い色が格式高い雰囲気を醸し出すことから、その後も、武家社会で好まれた色です。
装束はもちろん、茶道具・漆器・建築にいたるまで使用されました。
樹皮を使って黒く染めることは、古くから採用されており、奈良時代には、これが染料として使用されていた記録も残っているのだとか。
持統天皇の時代、「百姓には黄色、奴には皁(くろ)を着せよ」という詔が出されたことを『苅安色』の章でお伝えしましたが、この時の『皁(くろ)』というのは、橡の樹皮を使って染めたものではなかったか?と考えています。
そして、素染めだと亜麻色のような色になり、灰汁を使うと黄色っぽくなることから、もしかしたら、百姓の黄色というのも、原料は橡だったのではないか?と考えるようになりました。
材料は同じでも、染め方などで色が変わるというのは、ある意味、自然のサプライズ・プレゼントのようなもの。
経験の中で、その知識を得てきた昔の人に感謝ですね。
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