宍色(ししいろ)
2024/12/06
宍色は「ししいろ」と読みます。
「ししいろ」は獣の肉の色という意味です。
農耕民族の私たちの祖先は、いつ頃から「肉」を食べていたのでしょう?
奈良時代の木簡に残された資料によると、鹿と猪(いのしし)が、普通に食用とされています。
大豆から醤なども作られていて、意外に、豊かな食事をしていたのでは?と、想像できます。
同じ奈良時代に完成した日本書紀には、日本で初めての『肉食禁止令』についての記述があります。
天武4年(675年)、第40代天皇である天武天皇(てんむてんのう)によって出された、<牛、馬、犬、猿、鶏>の肉を食べることを禁止をした法令です。
そんなことからも、鹿と猪が獣肉の主役となったのでしょうね。
平安時代に作られた国語辞典・百科事典ともいうべき『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』によると、
宍は肉の同音異体とされています。
鹿の肉は、鹿肉(かのしし)
猪の肉は、猪肉(いのしし)
『宍』は音読みで、ニク。訓読みで、シシ。
その辺りから、肉色を『ししいろ』と呼んだようです。
動物の肉の色だけでなく、日本人特有のうすい黄赤系の肌の色も、『宍色』と呼ばれていました。
これに変化が訪れたのは、江戸時代。
五代将軍家綱によって出された『生類憐みの令』が発端です。
犬猫はもちろん、牛や馬、鳥類、魚類までも対象とした生き物の殺生禁止令が出されたのです。
狩りをする事も、食べる事も全て禁止。
「ダメって言われるほど、食べたい気持ちは大きくなっていく」
と思った人々が、工夫をこらします。
じゃあ、嗜好品じゃなくて、滋養強壮によい『クスリ』として扱おう!
ついでに、名前も変えちゃおう!
ということになり、
馬肉は『サクラ』に、猪肉は『ボタン』に、鹿肉は『モミジ』に・・・・。
そして、宍色(ししいろ)は『肌色(はだいろ)』とよばれるようになったのでした。
ところが、昨今、人種差別に対する問題意識から、この『肌色』という名前が変化してきています。
子どもの頃によく見かけた「肌色」のクレヨンや色鉛筆などは『うすだいだい』あるいは『ペールオレンジ』と表記されているのです。
時代により、社会の情勢により、変化する色名ですが、今後、また新たな名前になっていくのかも?
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