辰砂(しんしゃ)
2024/10/10
辰砂(しんしゃ)というのは、日本では『丹(に)』と呼ばれる鉱物のことです。
水銀を含む天然の鉱物で、朱色の顔料や漢方薬の原料となります。
中国において辰州(現在の湖南省近辺)で良質のものが多く産出したことから、「辰砂」と呼ばれるようになりました。
原始民族が色を意識するようになったのが、いつごろなのでしょう?
少なくとも、太陽や自分たちの血の『赤』という色に対しては、早くから特別な意識を持っていたと考えられます。
朝陽に対しては、暗闇の恐怖から救い出してくれて、あたたかさを与えてくれる喜びを感じたでしょう。
血に対しては、痛さに加え、死に至る恐怖を感じたことでしょう。
そういう意味で、『赤』は、命に直結する祈りの色だったと言えます。
医学の知識のない時代、自然治癒、自己回復力の助けになると信じたもの・・・それが『赤い色』だったのでしょう。
古墳の内壁や石棺・壁画などに、赤の彩色がされているのは、死者の復活を願っての事と言われます。
また、魏志倭人伝によると、倭人は身体に朱を塗っている、といった記述が残っています。
そういった『赤』が作り出せる辰砂(しんしゃ)が、地中から出てきたというので、別名『賢者の石』とも呼ばれるのです。
辰砂は、主に、中国で採れましたが、日本にも鉱床はありました。
今も、日本各地に『丹(に)』のつく地名はありますが、それが、鉱床があったという証。
弥生時代から古墳時代にかけて、大陸からやってきた、丹生氏が辰砂が採れる地域を探し、そこから朱色をつくる技術を伝えました。
この色が、神社の鳥居などに塗られる『丹色』です。
丹色(にいろ)については、コチラ
鳥居に塗られたり、橋の欄干に塗られたりするのは、『赤』という色に期待する、魔よけという意味もありました。
加えて、成分の水銀が防腐剤の役目も果たしていました。
実は、この水銀には、もっと大きな役割があったのです。
金をメッキする際に、欠かせない鉱物・・・それが水銀でした。
奈良の大仏の全身を金で覆う際、金9トンのために、水銀を50トン使ったという記録も残っているとか。
金と水銀を混ぜて溶かしたものを塗り、熱を加えると、金メッキができるのです。
中国では、西暦200年頃には、この技術を持っていたので、水銀を含む鉱物『辰砂』は、経済的にも大事な商品。
金を施された仏像が、盛んに作られたとの事。
飛鳥時代に、日本にもたらされた仏像も、こういったものの一つだったのかもしれません。
多くの富をもたらす辰砂は、不老不死の霊薬だとされました。
クスリとして用いられたのですね。
今では、水銀を多量に摂取することは、人体にとって有害ということがわかっていますが、その頃は、仙人になれる仙丹だと信じられたのです。
秦の始皇帝は、不老不死を願うあまり、これを摂取し続けたことで、水銀中毒で亡くなったとも言われています。
今でも、漢方薬などで使われてはいますが、クスリは毒でもあります。
使い方を知る知識は大事ですね。
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