葡萄色(えびいろ)
2024/06/26
葡萄色と書いて、平安時代の人は『エビいろ』と読みました。
山葡萄(ヤマブドウ)の古名、エビカズラが名前の由来です。
エビカズラは、古代より日本に自生していて、古くから馴染みのあるものだったようです。
源氏物語にも、この葡萄色(エビいろ)は、よく出てきます。
たとえば、「花宴(はなのえん)」の段
ここでは、光源氏が右大臣家で『朧月夜(おぼろづきよ)』と出会うシーンが描かれています。
一夜の契りを交わしますが、調べてみると彼女は、源氏のことを快く思っていない弘徽殿の女御(こきでんのにょうご)の妹。
そう簡単に訪ねていける相手ではありません。
そんな折、源氏のもとに、右大臣家で催される『藤の宴』への招待状が届きます。
この宴に招待された人たちは、時の権力者、右大臣家の宴だけに、粗相があってはいけないと、フォーマルな衣装で訪れていました。
そこへ現れた光源氏はといえば・・・・・
「桜の唐の綺の御直衣、葡萄染の下襲、
裾いと長く引きて、皆人はうへのきぬなるに、
あざれたるおほきみ姿のなまめきたるにて、
いつかれ入りたまへる御さま、げにいと異なり
花の匂ひもけおされて、なかなかことざましになむ
失礼にならない程度の、ちょっと洒落た普段着である直衣(のうし)姿で、参加したのでした。
その色遣いが、すごくオシャレ!
唐織りの直衣(のうし)に、桜のかさね、下には葡萄(えびぞめ)の下襲ね(したがさね)。
裾を長く引くのは、身分が高い証。
その優美なお姿は、格別。
花の美しささえ源氏の君に押されて、かえって興ざめなくらい。
山葡萄の色といえば、皮の部分は、暗い赤紫色です。
そして、中からはツルンとした薄い黄緑色が出てきます。
この二つが混ざると、鮮やかな明るい赤紫になるのです。
自然が見せてくれる、色のマジック。
その全てを愛してやまなかった、平安時代の人々。
『葡萄色(えびいろ)』は、明るい色から暗い色まで、かなり広い範囲の赤紫を指していたようです。
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