呂色(ろいろ)
2024/06/12
呂色というのは、うるし塗りの技法のひとつ、呂色塗り(ろいろぬり)の色です。
呂色塗りとは、生うるしに油類を加えずに精製したものを刷毛で塗った後、炭を使って磨き上げるという塗りの技法のひとつです。
何度も磨き上げることで鏡のように濡れたような美しい黒色が出来上がるのだそうです。
仏壇のお位牌などの美しい黒は、呂色というのですね。
呂色塗りについては、京都、冨田工藝さんの記事を参考にさせていただきました。
『呂』というのは、もともとは大陸からもたらされた、音楽の調子を表す言葉でした。
現在の1オクターブを十二に分けたものを「十二律」といい、その中の六段の陰の律を「六呂」、六段の陽の律を「六律」といいました。
言葉が不明瞭になる状態を『ろれつが回らない』と表現するのは、音階が不安定になることから出た言葉です。
呂と律は二つでひとつ、と考えられます。
これによって表現されたものが『声明(しょうみょう)』です。
声明とは、仏典に音楽をつけたもので、仏教儀礼に用いられます。
キリスト教でいう『聖歌』や『讃美歌』にあたります。
宗派によって違う、御詠歌(ごえいか)と呼ばれるものも、声明に端を発していると言えます。
その曲節は、今も民謡や浪花節、浄瑠璃などの元になっています。
出雲の阿国が始めた、歌舞伎踊りや盆踊りなどにも影響を与えた声明は、日本の芸能の元祖とも言えるかもしれません。
インドで始まった詠法が中国に伝わり、日本へは平安時代、慈覚大師・円仁が伝えました。
それを天台宗の僧侶であった良忍が、京都の大原の地で、譜面の改新や旋律の整理を行い、融通念仏宗の開祖となったのでした。
この地にちなんで、良忍の声明は『大原(魚山)流』と呼ばれています。
大原には、『呂川』と『律川』という川があります。
この地が、声明と共に過ごした時間を今に伝えるかのように、静かに流れています。
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