露草色(つゆくさいろ)
2024/03/14
露草(つゆくさ)‥‥
夏の朝、たんぼのあぜ道や路地のわきなどに、小さくひっそりと咲く青い花を、誰もが一度は見かけたことがあると思います。
朝露に濡れて、涼しげに咲く様子は、暑さの中で感じる一瞬の涼。
朝に咲いたものが、昼過ぎにはもうしぼんでしまう、ひ弱で、可憐なイメージですが、これが中々、たくましく生命力の強い植物です。
万葉集にも、その名が出てくるほど、昔から人々の周りにあった花でした。
その美しい色を、人々は、残したいと思ったのかもしれません。
花を布にこすりつけて染める『摺り染め』にしました。
丹色(にいろ)でも、ご紹介しましたが、摺り染めは、水にぬれると流れ落ちてしまうのです。
そんなことから、ツユクサは、古くはツキクサ(着き草)➡月草と呼ばれました。
水で流れ落ちるほど、布に定着しないところが、まるで、うつろいやすい人の心のように感じたのでしょうか?
月草は、『移ろう(うつろう)』の枕詞(まくらことば)として使われています。
月草の うつろひやすく 思へかも 我が思ふ人の 言も告げ来ぬ
露草(つゆくさ)のように変わりやすいからでしょうか、私が想っているあの人がなんにも言って来ないのは。
これは、大伴坂上家之大娘(おおとものさかのうへのおほいらつめ)が、夫の大伴家持(おおとものやかもち)に贈った歌。
恨みがましい気持ちの表現も、花の可憐さで、ずっしり感が少し軽やかに感じられます。
この露草の変種で『青花(あおばな)』と呼ばれる花の青い汁が、積極的に使われ始めたのが江戸時代。
水に流れるという特性を活かして、友禅の下絵を描く時に使われたのです。
色を挿し、金を載せて、刺繍することで豪華に、そして華やかなになる友禅染の、最初の一歩が、この青い色なのです。
青花の汁を搾って和紙に塗り、乾かし、また塗っては乾かしを繰り返し、濃い色素を定着させたものを『青花紙(あおばながみ)』といいます。その生産は、滋賀県草津市が有名です。
この青花紙を、小さく切って水を加えると、青い汁が溶けだします。
これを使って下絵を描くのです。
色をさした後、水にくぐらせると、下絵の青だけが流れてなくなるという使い方を考えた昔の人はエライと思いませんか?
可憐な花、だけど、とっても役立つ現実的な花ですね。
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