香色(こういろ)
2023/03/16
香色(こういろ)というのは、香で染めた色のことです。
実は、伽羅色を含めた「香染め」というのは、丁子という名のお香で染めた色のことです。
丁子は、こんなカタチ。釘のようなカタチ(丁字)から名づけられました。
これで染めると、丁子の香りが染めた生地に移って、はんなりした色と共にその香りを楽しむことができるのです。
平安時代の貴族たちが好んだのは、「色と香り」その両方でした。
焙煎液を入れると、入れないとでは、かなり出来上がりの色が変わります。
丁子で染めた丁子色を「香色」と呼び珍重しました。
江戸時代には、丁子色より濃い色を伽羅色(きゃらいろ)と呼びました。
色を濃く仕上げるには、何度も液につけるという、手間と時間とお金がかかります。
なので、濃い色ほど上等なものになります。
平安時代には、濃い色は身分の高い人しか身につけることができなかったので、お香の中でも最高峰とされる伽羅(きゃら)の名を、香色の濃い色に使ったという事です。
源氏物語にも、香染めの描写がでてきます。
<源氏物語「藤裏葉」より >
宰相殿は、すこし色深き御直衣に、
丁子染めの焦がるるまでしめる、
しろき綾のなつかしきを着給へる、
ことさらめきて艶に見ゆ。
夕霧の宰相は、(父親よりは)少し濃い色の御直衣に、
丁子染めの焦げ茶にみえるほど濃く染めたのと、
白綾のしなやかな下襲ねをお召しになっていられるのが、
ことさらに花婿らしく優艶に見えます。
--瀬戸内寂聴、訳
この夕霧の宰相というのは、光源氏の息子のことです。
丁子で染めるというだけでも、香り高く、非常に貴族たちに好まれたものでした。
しかも、この時は、とても濃く染め上げた香染めの衣装。
雲居の雁との結婚問題に、ようやく彼女の父親が折れたかたちで、長年の思いをとげた夕霧。
翌日、そのことについて、父である光源氏と話している時の、晴れがましいような気持ちが、その衣装から想像できますね。
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